企業事例 株式会社ライナフ

2014年11月に創業された株式会社ライナフは、不動産管理向けシステムおよびアプリの開発、不動産活用サイトの運営、さらに不動産管理向けハードウェアの製造・販売を行っています。同社代表取締役 滝沢 潔氏は、起業前は銀行で資産運用相談や不動産投資セミナーの講師などの業務に従事していました。また自身でも不動産投資を行い、4棟のビル・マンション経営をしていました。 不動産利用の多様化を考え、時間単位で物件の貸し借りができるシステムを作りたい。そこで、Twilioを活用したスマートロックの開発に乗りだしたのです。

マンション経営者の空き室問題を解消したい

物件の時間単位での利用を考えたのは不動産投資のリスクを考えたからです。不動産投資でもっとも怖いのは、空き室が出ること。融資を受け投資していれば、空き室が出ると返済もままなりません。同じような悩みを持つ不動産オーナーは多いはずだと、滝沢氏は考えていました。

また、国内人口は減少傾向にあり、今後は月単位で住む、借りる不動産物件は供給過剰となることは間違いありません。不動産ビジネスにおいてこの状況を打開するには「新たに月単位ではなく時間単位で物件を貸すことで、不動産の利用を多様化し広げる必要があると考えました」と滝沢氏は言います。

無人の鍵の開閉、内覧、貸し会議室の運用を実現した Twilio

物件を時間単位で利用できるようにする。そのために必要となるのが、新たな鍵のソリューションでした。そこで滝沢氏は、鍵をインターネットにつなぎスマートフォンなどを使って細かい単位で開閉、管理ができるようにするスマートロックを考案します。

スマートロックで新たな不動産活用を生み出し、不動産の世界に革命を起こそうと起業したのがライナフです。ライナフではスマートロックの「NinjaLock」を開発し、それを活用して無人でも物件見学ができる「スマート内覧」、貸し会議室の無人運用を実現する「スマート会議室」のサービスを展開しています。さらに、物件確認の電話を24時間365日、人の代わりに自動音声で応答する「スマート物確」のサービスも提供しています。

不動産管理会社には物件内覧の際に人の介在を排し、顧客の都合に合わせいつでも内覧できるようにしたいとの要望がありました。人を介さずに時間単位で鍵の管理ができるスマートロックがあればこの要望に応えられる、そうして生まれたのがスマート内覧のサービスです。スマート内覧では当初、スマートフォン・アプリで鍵の開閉ができる仕組みを不動産管理会社に提案しました。ところがその方法は不評だったのです。

内覧サービス時に鍵の開け閉めをするのは、不動産仲介会社の担当者や個人の顧客です。彼らのスマートフォンに、鍵開閉用のアプリケーションをインストールしてもらうのはかなり敷居の高いものがあったのです。さらに、フィーチャーフォンを利用している人もまだたくさんいます。そういった顧客に対応するには、人が介在せざる得なくなってしまいます。

そこでライナフでは、スマートフォン・アプリに加えWebブラウザで利用できるWebアプリケーションと、音声通話で鍵を開閉できる仕組みを考えます。スマートロックにいかにして音声通話を組み込むのか、ライナフではこの課題を早急に解決する必要がありました。

音声通話を利用したリモートロック制御と、内覧時の音声通話コミュニケーションに Twilioを活用。サービスは順調に推移

音声通話を利用する鍵管理アプリケーションを開発するにあたり、ネットと電話をつなぐ仕組みとして選んだのがTwilioでした。「開発で苦労することが分かっていたので、ネット上の仕組みを電話から操作する機能を自分たちで開発するつもりはありませんでした。そうなるとこれを実現できるサービスは、Twilioしか選択肢はありませんでした」と滝沢氏。APIを利用し数行のコードを書くだけで音声通話とネットを連携できるサービスは、世の中には唯一Twilioしかないとライナフでは判断したのです。逆に言えば「Twilioがなければ、音声通話での鍵の開閉は諦めていました」とも言います。

実際、Twilioが提供するAPIはかなりシンプルで分かりやすく、音声通話から操作する仕組みのテスト環境などは、1日で準備できたとのことです。Twilioの利用で、ライナフが苦労することはほとんどなかったと言います。

さらにライナフでは、内覧時の音声通話コミュニケーションにもTwilioが利用できると考えます。スマートロックの仕組みでは、室内に携帯電話回線でネット接続するタブレットが置いてあり、そのタブレットからスマートロックにBluetoothで接続して鍵を制御します。タブレットには内覧時の案内や物件の詳細情報も表示さ、それらを見ていて何か訊きたいことが出てきた際には、タブレットをタップするだけで不動産管理会社のコールセンターにつながる仕組みを実現したのです。

「Twilioを使うことで、資料を見ている延長線の操作ですぐに管理会社と話せます。管理会社側では、どの物件の何号室からの連絡かを把握した上で、顧客に対応ができます」(滝沢氏)

滝沢氏は、スマートロックの鍵管理の仕組みに音声操作を取り入れたことで、ライナフのサービスはビジネスのキャズムを超えたと言います。フィーチャーフォンを利用するユーザーが今後も仮に10%程度残るとすれば、企業はその10%の顧客のために人を介在させる今までと同じ体制を維持するでしょう。それではスマートロック活用の本来のメリットは享受できず、時間貸しのニーズに幅広く応えることはできなかったと滝沢氏は指摘するのです。

スマート内覧のサービスは2016年9月から利用を開始し、2017年8月までに8,300件を超える利用がありました。スマート会議室に登録されている会議室も70室を超え、順調に増えています。これら利用が積み上がる中で、Twilioは止まることなく利用されています。

ライナフ スマート内覧のしくみ。電話番号に電話をすると、Twilioがエージェントに転送。スマート内覧のしくみがロックを解除して内覧を可能にする。
ライナフ スマート物確のしくみ。電話番号に電話をすると、Twilioがエージェントに転送。スマート物確に接続される

物件名など固有名詞を識別できる音声認識技術を独自開発

さらにライナフでは物件確認、内覧の予約も音声通話だけで行える仕組みも提供します。不動産仲介業者にはかなり多くの電話をかける業務があります。これは物件が本当にその時点で空いているかを、管理会社に電話をかけ確認するのです。不動産管理会社は、問い合わせ電話を受けるとデータベースなどから該当する物件情報を引き出し、空きを確認し問い合わせに回答します。これには現状、多大な人的リソースが投入されています。

この物件確認の電話に自動回答するのが、スマート物確です。汎用的な音声認識の仕組みでは固有名詞の認識精度が高くなかったので、ライナフでは物件名などの固有名詞を正確に識別できる音声認識技術を独自に開発しました。それを用い音声通話で指定される物件名を自動認識します。認識された物件名のデータはTwilioを経由しデータベースに渡され、該当する物件情報を自動検索します。検索結果は再び音声に変換され、顧客に返答されます。物件が内覧できると分かれば、次のステップではTwilioを使った音声通話の操作で内覧予約ができるのです。

このようにTwilioは、音声通話とバックエンドの仕組みのインターフェイスとなっています。Twilioをインターフェイスとすることで自動操作を実現するだけでなく、音声通話のさまざまなログを残すことができます。蓄積されたログ情報を使い物件問い合わせの動向把握が可能となり、さらにはそれをマーケティング活動へと発展させられるとも滝沢氏は指摘します。

音声通話による操作はまだまだ広がる

コミュニケーションがすべてスマートフォン・アプリやWebアプリケーションになることはないでしょう。サービスを提供する際には、音声通話も含めた多様なユーザー体験を提供できることが今後も重要となると滝沢氏は言います。

「スマートロックのようなIoTでは、アプリケーションから操作する、センサーデータで操作するとさまざまな操作方法があり、その中の重要な方法の1つが音声です。音声操作には、今後もさまざまな使い方ができると考えています」(滝沢氏)

現状でもTwilioのサービスには十分な安定性と信頼性があります。しかし、今後音声通話のコミュニケーションがさらに増えれば、より一層の安定性と信頼性が求められます。もしTwilioが止まればビジネスチャンスを失うだけでなく、顧客の業務を止め大きなビジネスリスクになりかねません。今後も今まで同様堅牢で安定したサービスの提供に、滝沢氏は期待しています。

会社名
株式会社ライナフ
事業内容
不動産管理向けシステムおよびアプリの開発、不動産活用サイトの運営
不動産管理向けハードウェアの製造・販売
住所
東京都千代田区神田須田町2-1-1 ザ・パークレックス神田須田町 8F

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